伝聞証拠

2010年02月10日

今日は刑事訴訟法の勉強で疑問に思った点についてなので、つまらない話しです。
単なる私自身の備忘録です。

酒酔い鑑識カードの証拠能力については、最高裁昭和47年6月2日判決が記述内容ごとに伝聞書面(刑訴法321条)の適用条項を検討している。
具体的には、化学判定欄及び外部的状況に関する記載については、検証調書(刑訴法321条3項)に該当し、被疑者との問答及び飲酒日時、飲酒動機の欄については、3号書面(刑訴法321条1項3号)に該当するとしている。

ここで、後者の3号書面該当性について、上記判例は「巡査作成の捜査報告書たる性質のもの」であることを理由とする。
この部分の解説する書籍の記述について若干の問題点がある。

この点については、LECの完択六法(2009年版)には、「いずれも321条1項3号の書面(員面調書)にあたるとしている」との記載がある。
員面調書?
それならば、被疑者の供述なんだから3号書面ではなく刑訴法322条1項(被告人の供述録取書)が適用されるべきだろうって思ってしまう。

学術体系書(いわゆる基本書、田口第4版補正版、池田前田第3版)を調べると、「員面調書にあたる」とは一言も書いていない。ただ、積極的になぜ3号書面に該当するのかの解説は薄い。

そこで、過去の解説文献を調べると、

「被疑者の取調の結果を記載した書面(刑訴321条3項)というよりは、司法警察職員が被疑者の応答状況を見分したままを記載した書面(いわば非供述証拠としての使用)と解したものと思われる。」
(法学セミナーベストセレクション229号134P1974年10月1日、光藤景皎)

「被疑者との問答の記載のある欄については、本判決は、これを捜査報告書たる性質のものとして、刑訴法321条1項3号の書面にあたると判示した。この欄の記載は、『カード』の性質からみて、もともと被疑者の供述内容を証拠とするための取調ではなく、質問に対する被疑者の応答状況から、その飲酒の程度を知るための具体的資料を得るためのものと考えられる。したがって、内容の真偽に関わりなく、被疑者の言葉をそのままに記載すべきものとするならば、これは、供述証拠としてではなく、言葉がいわゆる非供述証拠として使用される場合にあたるから、むしろ、刑訴法321条3項の検証結果を記載した書面にあたると考える余地がないでもない。しかし、被疑者の応答状況を見分したままに記載するには、『カード』の余白も少な過ぎるし、事実簡単な記載しかなされていない。したがって、これを司法警察職員による被疑者との問答状況の報告(一種の顛末報告)とみるならば、判示のように、刑訴法321条1項3号の書面とみるのが妥当であろう。」
(昭和47年度重要判例解説139P1973年6月、森井暲)

これで納得!

3号書面は「員面調書等」であって、「員面調書」だけではない。
LECの完択は明らかにミスリードでしょう。
単に「等」を入れ忘れただけだと思いますが。

ちなみに光藤教授は現在でも信州大学法科大学院で教鞭を執られていますが、森井教授(関西大学名誉教授)は6週間前(昨年12月31日)に亡くなられたそうです。
一言「Goodjob!」と御礼が言いたかったです。合掌。

edo_yaroh at 22:33コメント(0) 
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