新人弁護士向け税金講座

2012年01月17日

最後に消費税について少々。
弁護士「法人」ではなく「個人」事業主としての新人弁護士を前提に解説をします。

結論から先に言うと、登録したての新人弁護士は消費税について特に税務上の手続きは原則として必要ありません。
事業開始1年目と2年目は「免税事業者」に該当するため、消費税の納税義務が免除されるからです。
免税事業者とは、その課税期間(1月1日~12月31日)の基準期間(前々年の1月1日から12月31日)における課税売上高が1,000万円を超える事業者をいいます。
課税事業者か免税事業者かの判定の基礎となる基準期間が存在しないことから、1年目と2年目は免税事業者となる訳です。
3年目になり、前々年の課税売上高(=免税期間中の税抜処理をしない売上総額)が1,000万円を超えるようになれば、消費税の申告が必要になります(申告期限は毎年3月31日)。
基準期間における課税売上高が1,000万円を超えなければ依然として免税事業者のままです。
免税事業者であっても、建物の購入など多額の課税仕入れが発生して還付を受ける必要がある場合には、課税事業者を選択しなければ還付を受けることはできません。
意味分からないと思いますが、消費税を多く払ったら還付の可能性があるという程度は覚えておいて損はないと思います。
これを忘れる税理士が多く、依頼人から損賠賠償請求をされる事例が多いそうです。

さて、次に免税事業者である期間中の消費税の扱いです。
免税事業者は消費税を納める義務が免除されるだけであって、課税対象となる取引に消費税が掛からなくなるという訳ではありません。
よって、免税事業者であっても、依頼人に請求書を発行する際には、消費税を請求する必要があります。
消費税を明示して請求しなくても、請求金額の105分の5は消費税です。
課税取引は法定されており、納税者個人が消費税を取る取らないを決めることはできません。
よく、商店街の八百屋さんで「消費税サービス」と宣伝していたりしますが、正確には「消費税分サービス」と言った方がいいでしょう。
消費税分をサービスした価格に消費税が含まれているのですから・・・。
堂々巡りです(笑)

支払う消費税(課税仕入れ)も同じです。
商店街で物品を買うときに、一々支払先の相手が課税事業者か免税事業者かを確認せずに、代金を支払っていますよね?
課税取引ならば課税事業者か免税事業者かを問わず消費税が含まれているので、正しい認識です。

課税事業者になった時の税務上の手続きや確定申告の仕方等は、自分で勉強するか、税理士に丸投げしてください。
もっとも、特別な知識がなくても、前回もお知らせしたココで指示通りに数字を入力するだけで簡単に消費税の申告書が出来上がります。


新人弁護士向け税金講座は、今回で一区切りとしたいと思います。
少しはお役に立てましたか?
誰も見てねーよって言うツッコミはなしで(笑)

edo_yaroh at 17:13コメント(5) 

2012年01月14日

前回は事業所得が発生する見込みの新人弁護士の税務上の手続きを解説しました。
今回は、事業所得に係る具体的な日々の事務について簡単に解説します。

前回解説したとおり、事業所得の所得額は自分で計算しなければなりません。
収入と必要経費について、会計資料を集めて計算する必要があります。

収入については、依頼人への請求書や発行した領収書の控えなどが会計資料になります。
必要経費については、支出先発行の領収書やレシートなどが会計資料になります。

これらをコツコツと集めて整理しておく必要があります。

また、開業費(開業前に事業所得を得る準備のために要した費用)に係る会計資料も保存しておく必要があります。
例えば、弁護士会への登録費用、郵送代、職印代、事務所賃貸に係る諸費用などが考えられます。
開業費は繰延資産として資産計上した上で、5年均等償却か任意償却かの選択ができます。
意味が分からない人は勉強するか、または、税理士に丸投げしてください。

どんな支出が必要経費になるか?、家事費との区別は?、どの勘定科目に該当するか?、未収金・未払金の処理は?、決算の仕方は?などは書こうと思えば切りがなくなるので割愛します。
巷に初心者向けの確定申告の解説本は溢れているので、勉強してみるのもいいでしょう。
最近は会計ソフトが充実しているし、申告書や決算書もココから簡単に作成できてしまうので、なんてことはないでしょう。
面倒くさい人、または、多忙な人は税理士に丸投げしてください(笑)

edo_yaroh at 12:01コメント(0) 

2012年01月10日

確定申告が必要になる弁護士は以下のとおりです。

1 年末調整を受けた弁護士で例えば以下に該当する弁護士
 ex.1 個人受任した売上がある弁護士(事業所得)
 ex.2 原稿料収入がある弁護士(スポットなら雑所得になるでしょう)
 ex.3 株で儲けた弁護士(笑)(譲渡所得)
 ex.4 FXで儲けた弁護士(笑)(雑所得)
 ex.5 年末調整で控除不可の医療費控除や住宅借入金控除がある弁護士
2 軒下弁護士(事業所得)
3 即独弁護士(事業所得)

ここまでで、事業所得に該当し、確定申告の必要がある収入は、
・勤務弁護士の個人受任分
・ノキ弁の個人売上
・即独弁護士のすべての売上
であることが分かりました。

次に「事業所得」の計算方法は

総収入金額-必要経費=事業所得です。

会社の「収益-費用=利益」と同じです。
ここで重要なのは、給与所得のように所得を支給者が計算してくれる訳ではなく、自分で計算しなければならないことです。
また、給与所得と異なり、事業所得の発生が見込まれる場合には、税務署に開業届を提出しなければならないなど手続きが必要になります。
青色申告をする場合には、簿記や会計の最低限の知識が必要になります。

※青色申告とは
帳簿に基づき決算(会計期末で帳簿を締めて繰り越す作業、または財務諸表の作成手続きの総称)を正確にして事業所得の金額を正確に計算することと引換えに、青色申告特別控除などの特典を与える制度。申告書を青色にして区別していたことから、青色申告という。
私が会計事務所に勤め始めた頃は現実に青色の申告書でしたが、現在は青色ではなく、色での区別はなくなりました。
様々な特典が受けられるので、通常は開業届と一緒に提出する。

事業所得に係る弁護士業務を始めるにあたり、必要な税務上の手続き

1 個人事業の開業届出書

・提出期限 事業開始から1か月以内
・提出先 納税地(原則として住所地)の所轄税務署
※事務所所在地が上記税務署の所轄外の場合は当該事務所所在地の所轄税務署にも要提出。
・書式 これ
※表面だけ印刷して、必要事項を記入。
・提出部数 1部
※別に「控え」1部を作成(コピー)し、税務署受付で収受印を押してもらい、自分で保管しておく。
※「控え」は用紙の欄外に控印を押す、または「控」と手書きでもオーケー。

2 青色申告承認申請書

・提出期限 青色申告をしようとする年の3月15日まで(1月16日以後の提出は事業開始から2か月以内)
・提出先 納税地(原則として住所地)の所轄税務署
・書式 これ
※表面だけ印刷して、必要事項を記入。
※複式簿記により総勘定元帳を作成して特別控除65万円の適用を受けようとする人は「複式簿記」を。
※簡易な簿記(小遣い帳程度)により申告する人で特別控除10万円の適用を受けようとするものは「簡易簿記」を。
※備付帳簿名は複式簿記なら「現金出納帳」「総勘定元帳」「仕訳帳」程度でオーケー。簡易な簿記なら「現金出納帳」程度でオーケー。
・提出部数 1部(控えについては開業届と同じ)

申請書と言ったって、特に「あなたは承認されました」なんて通知はこない。
不承認通知がなければ承認されている。


事業所得が発生する予定の新人弁護士は、早速、税務署に提出してきましょう!

edo_yaroh at 13:38コメント(0) 

2012年01月07日

前回は弁護士業務に係る所得分類について説明しました。
今回からは「給与所得」と「事業所得」の計算方法の違いと税務上の手続について理解することを目標に、以下解説します。

まず、所得税計算の基本から

所得は10種類に分類されますが、最終的に各所得は合計されます。
本でよく「譲渡所得税」などと記載がありますが、そのような税目はなく、正確には「譲渡所得に係る所得税」または「譲渡所得により生じる所得税」です。

納税額が算出されるまでの計算は
1 合計所得金額から、医療費控除や配偶者控除などの「所得控除」をして課税所得金額を算出。
2 課税所得金額に「税率を適用」して税額を算出。
3 税額から配当控除や住宅借入金特別控除などの「税額控除」をして差引所得税額を算出。
4 差引所得税額から源泉徴収税額や予定納税額を差し引いて「納税額」を算出。

所得税計算の基本は、特に事業所得が発生する弁護士で自分で申告する人は覚えておいて損はないと思います。

これから説明する所得の計算方法は、上記の1の合計所得金額を算出する前提となる各所得金額の算出方法の話しです。

まずは「給与所得」の計算方法から

これは単純です(必要最小限に大雑把に記述します)。

支払金額-給与所得控除額(法定の一定額)=給与所得

給与所得の計算方法は、支給者が源泉徴収票を発行してくれるので(上記の金額が全て記載されている)、余り意識しなくてよいでしょう。
ここで重要なのは、事業所得と異なり、必要経費が控除できないという点です。
※一部、特定支出控除という例外がありますが、ここでは割愛します。
給与所得しかない弁護士が、コツコツと飲み屋で領収書を集めても意味はありません(笑)

給与所得は、毎月、支払者により所得税が源泉徴収されます。
源泉徴収とは要するに所得税の仮払いです。
支払者は支払の際に源泉徴収税額を天引きして、原則翌月10日までに税務署に納付しています。
これによって国は毎月一定の歳入(税金)を得ることができるという仕組みです。

フルタイム勤務をしている場合には、通常は支払者によって年末調整がされます。
年末調整とは当該支給者から支給された給料に係る給与所得について一年間の総決算をする手続です。
前述のように毎月源泉徴収されている訳ですが、それはあくまで仮納付なので、扶養家族の異動や保険料控除などを加味して所得税額を算出するのです。
そして、算出税額が1月から11月まで源泉徴収された税額の合計よりも少なければ差額を「還付」、多ければ差額を「徴収」」となるのです。
このように年末調整は給与所得の総決算のようなものですから、所得が給与所得だけで、かつ、勤務先が1ヶ所だけで、かつ、医療費控除など年末調整では控除できない所得控除や税額控除がなければ、年末調整により所得税の課税関係は終了します(確定申告の必要なし)。
直接に税務署と接触することはありません(何の手続もいりません)。

給与所得についての解説は以上です。

次回は確定申告が必要になる弁護士(事業所得の計算と手続き)について解説したいと思います。

edo_yaroh at 13:37コメント(0) 

2012年01月06日

弁護士になっても知っているようで知らない税金の話しを少々。
和光でも同期の修習生から質問をよく受けました。
皆さん興味があるようなので、弁護士業を始めるにあたり、とりあえず最低限必要な知識を以下に簡単にまとめておきます。
なお、堅苦しい論文でも何でもないので、出典や判例年月日等は省略します。
興味がある人は自分で調べてね。

まず、弁護士法人ではない個人の弁護士に関係する税目は「所得税」です(「消費税」も関係しますがその話しは余力があれば後ほど)。
所得税法はその発生原因に応じて「所得」を10種類に分類しています。
この中で弁護士業務に関係する所得は「給与所得」と「事業所得」です。

給与所得とは、
雇用関係ないしこれに類する原因に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受け取る給付
をいいます。
ここでは、雇用契約に基づく給付(=給料)と大雑把に捉えてもよいでしょう。

事業所得とは、
自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生じる所得
をいいます。

上記から、

勤務弁護士(雇用契約に基づき弁護士法人や法律事務所に労務を提供する弁護士、イソ弁の多くはこの形態でしょう)の場合
→給料は「給与所得」に該当します。

個人受任が認められている場合や独立採算のノキ弁の場合
→弁護士個人に帰属する売上から発生した所得は「事業所得」に該当します。

即独弁護士の場合
→弁護士法人でない限り、弁護士業務から発生した所得はすべて「事業所得」です。

ここまでで、これから得ることになる収入が「給与所得」なのか「事業所得」なのかは、理解できたと思います。
どちらか一方しか発生しないのではなく、勤務弁護士で個人受任が認められている場合(売上は個人に帰属)には、両所得が併存します。

次回は、「給与所得」と「事業所得」との違いを、主に所得の計算方法や課税上の手続の点から解説したいと思います。
出し惜しみしている訳ではなく、ただ単に眠たくなったのです(笑)


あ、申し遅れましたが、気まぐれ超不定期更新の本ブログを今年も宜しくお願い致します

edo_yaroh at 00:37コメント(2) 
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